患者さん一人一人の目標に合わせ、排泄、更衣、入浴などの日常生活動作や、調理・掃除などの家事動作の練習を行います。また、必要に応じて自宅環境改修のアドバイスや、職場復帰、自動車運転再開などの社会生活に向けた支援も行います。
このページの目次
- 上肢機能へのアプローチ
- 日常生活動作(ADL)、生活関連動作(IADL)へのアプローチ
- 自宅環境調整
- 高次脳機能障害に対する評価(神経心理学的検査:机上テスト)
- 就労支援(働くための準備)
- 自動車運転支援
- 園芸
- 自主トレーニング
麻痺や骨折等に対して、上肢・手指の機能改善のための練習を行います。
先進機器を使用・併用した練習も行っています。
病棟スタッフと協働し、食事、整容、更衣、排泄、入浴練習を行っています。
退院先を想定して、入浴シミュレータを使用して練習することもあります。
また実際の浴室を利用した練習も行います。必要に応じて、福祉用具のレンタルや購入の相談にも応じています。
家事動作をされる方には、実際に調理や掃除等の練習も行います。
更衣
入浴練習
入浴に関連する福祉用具
入浴シミュレータ
作業療法室に備わっているキッチン
家事動作練習
家屋情報用紙をもとに、自宅環境調整のご提案を行っています。必要に応じて、家屋訪問調査(担当スタッフが患者さんのお宅に訪問し、家屋環境の評価・改修の検討、福祉用具の選定、退院後に利用するサービスの検討を行う)を実施しています。
脳の病気や怪我(脳卒中、くも膜下出血、頭部外傷など)による脳の損傷により、「集中出来ない」「忘れっぽくなった」「怒りっぽくなった」「要領が悪くなった」などの症状が現れることがあります。これらは高次脳機能障害といい、周囲にも理解され難く、日常生活や社会生活に影響を及ぼす可能性があります。そのため、これらの症状の有無や程度を検査していきます。就労や自動車運転の再開だけでなく、日常生活の再構築においても、必要に応じて検査していきます。
就労支援について
当院では、病気や怪我による後遺症で就労が困難な方に対して、神経心理学検査(机上テスト)をはじめ、さまざまな職業に応じた評価や練習を行っています。必要に応じて、職場との面談や地域との連携を図っていきます。
就労評価と練習
当院で実施している評価には、神経心理学検査とMWS(ワークサンプル幕張版)などがあります。これらの評価を行うことにより、ご本人の得意なことや苦手なことを明確にします。
神経心理学的検査(机上テスト)
神経心理学的検査(机上テスト)
病気や加齢にともなう脳の変化を評価し、日常生活動作や生活関連動作に影響がないかを
確認します。影響が考えられる場合には、対策方法を検討するなどの支援を行っています。
MWS(ワークサンプル幕張版)
さまざまな作業の体験や必要なスキルの学習に役立つ効果的な職業リハビリテーションのためのツールです。パソコン業務、物品の棚だし作業、工具を使用した物品の組み立て作業など、対象者の職業に合わせた課題を選定し、就労場面に近い状況で作業の評価や練習をしていきます。
地域連携
当院では、復職や新規就労を目指す方に対して、地域の就労支援施設などと連携を図りながら支援を行っています。
就労支援施設を利用する目的は、生活リズムを整える、作業能力を高めるなど、人によってさまざまです。施設と病院で情報共有を行い、途切れのない支援を行っています。
ボランティア
当院では、ボランティア契約をした上で、就労に向けたボランティア作業を実施しています。
主に、書類の封入作業等の事務系の作業が中心となります。作業耐久性(体力)の評価、作業能力の評価・訓練、生活リズムを整えたいなど目的はさまざまです。
自動車運転について
自動車運転は、認知・予測・判断操作といった、総合的かつ瞬間的な認知および遂行機能を要求される、最上級の生活行為です。頭部外傷や脳卒中後の患者さんはこれらの能力に障害がある可能性があるため、道路交通法により自動車運転再開を厳しく制限されております。一方で、自動車運転は仕事や生活など社会復帰のために重要な手段となり得ます。そのため、当院では自動車運転再開を目指す患者さんを対象に支援を行っています。
当院の自動車運転支援の流れ
1.医師の指示
まず道路交通法上の免許証取得に必要な条件(身体機能、視機能、聴覚機能、てんかんの有無など)を満たしているか確認し、
運転評価を行う場合には、医師よりリハビリの処方が出されます。
2.セラピストによる面接
これまでの運転状況について目的や頻度などの情報をうかがいます。
併せて、脳損傷後の運転に関わる法律や当院での評価の流れを説明します。
3.神経心理学的検査・身体機能評価
リハビリのなかで検査や評価を行います。検査では注意力、記憶力、視空間認知、半側空間
無視の有無、遂行機能を確認します。身体機能評価では運動麻痺の有無、ハンドルやブレーキ
の操作に必要な筋力をチェックします。
SDSA
4.運転に特化した評価
①SDSA(Stroke Drivers’ Screening Assessment Japanese Version)
脳卒中ドライバーのスクリーニング評価 日本語版
脳卒中後の運転技能に関する研修プログラムの一部として開発されたものです。
安全運転に影響を及ぼす可能性のある認知機能の問題を明らかにする評価道具です。
VFIT
②VFIT(抑制課題付有効視野測定)
有効視野測定と脳(前頭葉)の抑制機能を測定する検査です。
65歳以上はVFIT‐Elderly versionで行います。
実車評価の結果と関係性が高く、当院では2016年2月から導入しています。
ドライブシミュレータ
③ドライブシミュレータ 三菱プレシジョン株式会社DS310 (以下、DS)
実際の運転環境に近い状態で操作の評価をするとともに、判断力・予測力を評価します。
操作に問題がある場合は、ハンドルにノブを取り付ける、アクセル・ブレーキ操作を左側で
できるようにする等の工夫をし、操作評価を行う場合があります。
5.実車評価
検査室内で行われる神経心理学的検査やDSのみでは判断が難しい場合に行います。
評価終了後は、ドライビングレコーダーに記録された映像を検証し、教官から危険場面の振り返りや、今後に向けてのアドバイスを受けます。
その際、担当療法士も評価したポイントを伝えます。
実際の路上評価場面
フィードバックに利用するドライブレコーダーの映像
運転中の速度、ブレーキ・ウインカーを出すタイミングなどが表示されます。
6.担当者間での話合い
上記検査や評価結果をもとに、主治医とセラピストで話合い、安全な運転が可能か、医学的な視点での助言を行います。
※最終的な再開可否の判断は免許センターまたは警察署にて行います。
当院の自動車運転評価者数と再開率
介護保険領域(通所リハビリ) での支援
当院では、退院後に高次脳機能障害による生活支援や、自動車運転再開・復職などの社会参加支援が必要な方に対し、外来通院によるリハビリテーションを実施し支援を行ってきました。
しかし2019年4月の診療報酬制度の改定により、要支援・要介護の認定を受けた方の医療保険での疾患別リハビリの実施が困難になったことから、介護保険制度で2018年10月より訪問リハビリを、2019年4月からは通所リハビリを開設し、支援を行っています。私たちが調べた限り、全国的には報告がなく極めて先進的な取り組みとなっています。
現在、認知症対策を含めた高齢ドライバーを支援しているのは、地域のケアマネジャーなどが個々に対応している場合がほとんどで、運転中止を含めた支援方法の確立を望む意見が聞かれています。当院の通所リハビリでは、本人と家族、ケアマネジャーと医療者による包括的な支援を目標としており、今後も地域で高齢者運転支援の場としての役割が期待されています。
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患者さんと一緒に、作業療法室前の手作りの花壇に花や野菜の植え付け・収穫を行っています。収穫した野菜を調理の練習に活用することもあります。
栽培・収穫の様子は病院日記『もうすぐサツマイモの収穫時期です』をご覧ください。
退院後の活動量を確保するため、入院中より自主トレーニングの定着に向けて指導しています。自主トレーニングが可能な患者さんには、リハビリの合間に自主トレーニングを行っていただいています。